執行官は特別職の国家公務員で、各地方裁判所によって任命される裁判所職員です
今回は執行官について紹介していきます。
執行官とはどのような仕事をするのか?
執行官は、地方裁判所に所属する裁判所職員です。一人一人が独立した司法機関とされ、裁判所内に執行官室が与えられます。
執行官の仕事は裁判の判決が実現されない場合にそれを強制的に実行する役割を担います。
たとえば、家の明け渡しを命じられた人が応じない場合には、執行官は家財道具などの全てを運び出し、債務者を退去させ、明け渡しを要求する債権者に家を引き渡します。
また、借金を返さない債務者の場合は、宝石や貴金属などを差し押さえ、それを売却して債権者への返済に充てることもあります。
同様に、子供の引渡しを命じられた親が引き渡さない場合、執行官は子供の監護を解除し、引き渡しを求める権利のある親に子供を引き渡します。
執行官は他にも、不動産の競売申し立て時には、不動産の状況を調査するなどの業務を担当したり、民事訴訟の裁判文書を当事者に届ける役割もあります。
このように、一般的な裁判所の職員とは異なり、執行官の仕事は現場で行われるため、債務者などからの抵抗に遭うこともあります。そのため、執行官は自身の判断で警察の援助を要請するなど強力な権限を持っています。
執行官へのなり方
執行官になるには、裁判所が実施する「執行官採用選考試験」に合格する必要があります。
一定の法律に関する実務経験を有する方が、採用選考試験に合格することで執行官として
採用されることとなります。
選考資格
法律に関する実務を経験した年数が通算して10年以上である者が受験することができます。
例えば、公務員の経験であれば、次のアからエまでの俸給表の適用を受けた方がこれに該当します。国家公務員や地方公務員を問わず、幅広い公務員が受験資格を満たします。
(ア) 行政職俸給表(一)
(イ) 税務職俸給表
(ウ) 公安職俸給表(一)
(エ) 公安職俸給表(二)
また、国家資格であれば、弁護士、弁理士、司法書士又は不動産鑑定士としての実務経験がこれに該当し、銀行、長期信用銀行、信用金庫、労働金庫又は信用協同組合における実務経験も該当します。
この他、執行官採用選考委員会が、法律に関する実務を経験した年数が通算して10年以上である者に該当するか否かを個別に審査します。
試験内容
執行官採用選考試験は、択一式と論文式からなる第一次試験と、面接からなる第二次試験があります。
具体的な内容は下記の通りです。
【1】第1次試験
・筆記試験(択一式)
出題分野 : 憲法、執行官法、民法、民事訴訟法、民事執行法、民事保全法、刑法
出題数 : 憲法、執行官法、民事訴訟法、民事保全法及び刑法各2問並びに民法及び民事執行法各5問(計20問)
試験時間 : 1時間・筆記試験(論文式)
出題分野 : 民法、民事訴訟法、民事執行法
出題数 : 各1問(計3問)
試験時間 : 3時間【2】第2次試験
・面接試験
人物、適性及び執行官に必要とされる専門的能力についての個別面接
裁判所ホームページから筆記試験の過去問を閲覧することが可能ですが、択一式の筆記試験は基礎的な内容が多いため、法律の学習経験者であればそこまで難しいものではないと思います。
試験によって民間人の中からも合格者が出ているようですが、裁判所書記官などの経験者が執行官として合格するケースが多い状況にあります。
執行官の年収
執行官は特別職の国家公務員で、各地方裁判所によって任命される裁判所職員です。しかし、国から固定の給与を受けるのではなく、事件の当事者が支払った手数料を収入としています。
執行官は、一人一人が独立した司法機関として、自己の判断と責任において権限を行使する裁判所職員です。
執行現場では難しい法律判断や臨機応変な現場対応等が必要なことも多く、それだけに一般の公務員とは違った大変さがあります。
執行官の給料は、一般の公務員とは異なり事件の手数料を収入としている独立採算制のため、年収数千万円といった破格の収入を受けているとの情報もあります。
以上、執行官について紹介していきましたが、執行官は、法律知識、当事者への丁寧な対応、的確な判断や実行力が求められるため、常に自己研鑽が必要になる仕事です。
また、裁判の実現を図るものであり、これが司法制度や社会秩序の安定に大きく貢献することにつながるため、非常にやりがいがある仕事です。